繁忙な日常が今日もはじまった。最低限の人数で最大の成果が求められる職場における、日常の景色がそれだ。ルーチンワークを終えカスタマーサービスから苦情の連絡が入った。最初はよくある苦情のように思えた。だがその日の問い合わせは癖があった。
CSから入った連絡は発注した荷物が届いていないという連絡だった。この職場でいつものよくある景色だった。特定の拠点で数百台のラストマイルに従事するDAが毎日数万の荷物を裁いている。私が働く職場は年末年始の夜も、朝も発注が鳴りやまない。何万という案件を毎日裁いていると配達先でトラブルがあるのは極力減らしたいと思っていても常時だ。
その日のトラブルは複数点ある荷物の一部が届いていないというものだった。いつものように担当DAに顧客から荷物が届いていない、配達時の状況説明と届いていないという荷物の行方を追ってほしいという連絡を行った。暫くして担当のDAから連絡が入ったどこの案件で発生した問題なのかと。住所及び顧客の名前を告げ次報を待った。
訪問したDAから顧客からの配達指示と異なる配達をしていた旨の報告を受けたと同時に複数ある案件の一部だけが配達されておらず、その配達されていない商品を弁償してほしいという内容があったと報告を受けた。私はその担当DAからの報告に不審点を覚えた。担当DAは配達指示を誤ったが、一部の商品だけ届いていないという内容だったからだ。私は担当DAから顧客に警察に被害届を出してもらうように指示を出した。改めて次報を待つと担当DAからおかしな回答が入った。担当DAが述べたのは顧客が警察へは被害届けを出されへんという内容だった。担当DAは配達中に当該顧客から何度も呼び出しを受けて参っていた。当日の配達も進んでいなかった。私は腰を据えてこの問題を考えることになった。当日たまたま余剰だったドライバーにリカバリーに行かせた。また改めて担当DAに今回の顧客がなぜ被害届を出せないという話なのかを顧客に尋ねてもらうように言い聞かせた。リカバリーに訪問したDAによる報告ではCS対応をしている今回の担当DAが参っているという内容だった。改めて担当DAに連絡を行った。すると担当DAから今回の顧客が懲役18年に入った前科者であるということがわかった。また担当DAは街宣車をつけるぞと脅しを受ける事となり、根負けして損害にあった商品に対して弁償する旨を伝えてしまったという報告を受けることになった。
この件はトラブルが長引いた。CSにも何度も連絡が入り休日に他の管理者から状況報告を求められた。当該顧客がCSと直接交渉したいという話も発生していたからだ。私が休日明けに出勤した際にも当該問題は解決していなかった。休日明けの出勤後、改めて担当DAに当該問題の状況確認をおこなったところ、経営している会社に何度も電話が入ったという話も聞く事となった。担当DAが所属する業者にも連絡があり、業者の現場責任者も参っていた。
私は改めて最寄りの警察署に被害届を出すように担当DAに伝達を行った。担当DAは躊躇し続けたが説得に応じて警察署に相談に訪問することになった。それ以降懲役18年の前科者からの連絡は途絶えたという。我々が訪問する配達先には道を外した顧客が存在することもある。今回の担当DAはそのような輩的な顧客がいた際は、毅然とした対応を行うべきだ。